時代の波にもまれて姿を消してしまった県産絹織物「甲斐絹」を復活させるべく立ち上がったのは傘、座布団、ストール、ネクタイと専門分野が違う4人の職人たち。
もともと丁寧な手作業でしか織り上げられなかった甲斐絹を厚手高密度から薄手まで様々な技術と経験を持ち寄り、最新織機の技術を組み合わせられたことで、見事に現代へと復活させました。
“座”の名前に相応しく、精錬、織り、製品化、さらに市場作りまで含めて甲斐絹の伝統を広める活動をしています。
江戸の粋な裏地は、今後も多彩な商品となっていきます。
伝統柄と技法の復刻からスタートした甲斐絹はhengenというブランド名で木のカプセルに入ったストールとなり、MOMAのデザインショップに選ばれるなど、話題を呼びました。近年ではcilk projectとして若手ファッションデザイナーとのコラボレーションで素材の美しさを再認識できるファッションの提案を行い、そうした活動が評価され、「羽ばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定されています。
県産絹織物の復興と拡大を目指して、次々と他分野とともに作っていくことを甲斐絹座はこれからも進めていきます。
奢侈禁止令によって派手な装いが禁じられていた江戸時代、表地を地味に裏は美しい色柄のものを楽しむ裕福な町人たちに重宝され、以降、明治時代には夏目漱石の文学において薄暗い夜の乏しき光線をキラキラと反射する鼠の羽織裏として、大正後期から昭和初期に活躍した金子みすずの詩集では小さな子供たちにとって集めたい宝物として甲斐絹は常に粋な人々の装いと共にあり、世代を超えた憧れ、
それが甲斐絹。